奨学金とは一体どういうものかまずは、その概要を知っておこう

大学進学にかかる費用について考えてみよう

 長引く不況や今回の東日本大震災などの天災によって、家計が苦しい状態に陥ったという人が今の日本には少なからずいることだろう。そこで大学進学に際して、少しでも保護者の経済的負担を減らしたい、もしできることならば負担をまったくかけたくないと考えている人も多いはずだ。そんな人たちに強い味方となるのが、現在、国や地方自治体をはじめとするさまざまな団体や機関、個々の大学などで運営されている各種、奨学金制度や教育ローンだ。それらを下の表にまとめた。これらを上手に利用すれば、大学入学前後やその後の大学生生活にかかる費用の多くを、また場合によってはその大部分をまかなうことだってできるのだ。言葉を変えれば、こういった制度をフルに活用すれば、経済的な理由から大学進学をあきらめるという事は絶対に避けられる。そのことはぜひ覚えておいてほしい。
 こういう時代だからこそ、受験生は勉強だけに専念するだけでいいと考えるのは、少々、情けない。自分自身の受験や大学生活にかかるお金が、いったいどのくらいかかるのか。そして、それをどうやってまかなうかを、みなさん自身でぜひ考えてみてほしい。そして、これについて一度、親と話してみよう。そのためにはまず、これから説明していく奨学金制度や教育ローンがいったいどういうものかを知ることからはじめたい。それがわかれば、さまざまあるものの中から、自分が活用できるものを捜し出すこともできるはずだ。

多くの大学生の生活を各種奨学金が支えている

奨学金制度の概要を説明する前に、現在、どのくらいの大学生たちが、各種奨学金制度を利用しているのか気になるところだ。そのあたりを、全国大学生活協同組合連合会(以下、大学生協)のデータから垣間見てみよう。
大学生協が発行する『CAMPUS LIFE DATA2010』(これは2010 年に全国の国公立・私立の4年制大学に通う9,871名の大学生に対し、さまざまなアンケートを行いそれを集計したもの)によると、日本学生支援機構をはじめとする各種奨学金を受給している人は全体の37.7パーセント(自宅生27.8パーセント、下宿生44.4パーセント)で、この5年間で6.5ポイント増えているという。下のグラフを見てほしい。ここ10 年間で、ひと月あたりに受け取る奨学金の平均額は約9千円ほど増えている。また、ひと月の収入における奨学金の占める割合は、10 年間で、なんと10.5 ポイントも増加している。これらが何を意味するのか。現在、奨学金を受け取っている大学生にとって、以前に比べ、奨学金が月々の収入の中で大きなウエイトを占めていることにほかならない。不況のせいで仕送り額が減り、アルバイトで得られる金額も頭打ち状態である現在、各種奨学金が多くの大学生の生活を支えているといっても過言ではないのだ。

奨学金のタイプは大きく分けてふたつある

奨学金の概要を説明していこう。奨学金のタイプは大きくふたつに分けられる。ひとつは、学生時代に受け取った金額を、大学卒業後に一定期間をかけて返還していく「貸与」タイプ。そして、もうひとつは返還の義務がない「給付」タイプだ。当然のことながら給付タイプのほうがありがたい。しかし、現在、日本では貸与タイプのものが多い。 貸与タイプも大きくふたつに分けられる。返還時に利子がかかるものとかからないものだ。この場合、無利子タイプのほうが返還時に負担が少なくて済む。ただし利子がかかるタイプでも、利率が年利2~3%と低利となっている。
 各地方自治体が実施する奨学金制度は、どちらかというと貸与タイプのものが多いようだ。自分の住んでいる都道府県や市などでどんなものがあるかホームページなどで確認しておこう。
 また、個々の大学で独自に運営・実施している奨学金制度も数多い。中でも全国の私立大学のほとんどが独自の奨学金制度を実施している。また、国公立大学でも、最近では独自の制度をはじめるところも増えている。
 それらの内容を見ると、入試や各学年での成績上位の学生に対し返還不要な一定の金額を渡したり、授業料を免除するという給付タイプの制度を導入しているところが多い。
 ここにきて、きびしい不況のあおりを受けたり、思いもかけない大規模な災害の被害を被り、突然、実家の経済状態が苦しくなり、学業を続けることが困難になってしまう学生も増えている。そういった学生に対して緊急に貸与タイプ
の奨学金制度を設けているところも多い。

奨学金を上手に利用するポイントとは

各種奨学金を上手に利用するためのポイントとはなんだろう。まずは、規模がもっとも大きい日本学生支援機構の奨学金制度の内容を検討し、上手に利用することからはじめたい。その上で、自分が受験しようとする大学の奨学金制度や自分が住んでいる地方自治体、各種育英団体が運営するものの中で、自分が利用できるものがあるかチェックしてみよう。
 日本学生支援機構の奨学金を受給しつつ、他の奨学金制度も利用できる場合も多い。 ここでひとつ忘れてはならないことがある。晴れて志望する大学に合格すると、すぐに入学の手続きをすることになる。その際、入学金や授業料の半額などを支払わないといけない。また、下宿などをする場合は契約料など大口の出費もある。しかし、奨学金のほとんどは、大学入学後に支給が始まるので、奨学金をそれらの出費に充てることはできない。
 そこで、それらの費用が足りない場合、国や各金融機関が運営する教育ローンを上手に利用したい。中でも国の教育ローンは、各都道府県に必ずある日本政策金融公庫が窓口となっており利用しやすい。その概要を下にまとめた。詳細はホームページを参照してほしい。国の教育ローンと日本学生支援機構の奨学金制度は併用できる。これらをうまく利用できれば、入学前後から入学後にかけて必要となるさまざまなお金のほとんどをカバーできるはずだ。

日本学生支援機構の奨学金制度の概要をきちんとおさえておこう

奨学金を上手に利用するポイントとは

 ここからは、日本学生支援機構によるが奨学金制度の内容について説明していこう。まずは下の図にその概要をまとめてみた。現在、日本では数多くの大学生たちが本奨学金制度を利用している。ちなみに2008 年現在で、全国の大学・短大に通う全学生のうちなんと3.1 人に1人が、日本学生支援機構の奨学金の貸与を受けている。
本機構が実施する奨学金は、二種類あるがどちらも貸与タイプ。つまり、卒業後、返還することが義務づけられている。そのうち返還時に利息がかからないものが第一種。利息がかかるものが第二種だ。下の表の二段目にもあるように、大学入学前に申し込むタイプ(予約採用)と入学後に申し込むタイプ(在学採用)がある。なお、今回の東日本大震災のような災害で被災した人で、今すぐにでも奨学金の貸与を受けたいという人には、「在学中、緊急に申し込むタイプ(緊急採用・応急採用)」もある。これについては、日本学生支援機構のホームページを参照してほしい。
予約採用と在学採用の申し込みから奨学金の貸与・返還までの流れを下の図にまとめた。

進学先が決まってなくても申し込みだけはしておく

ここで大事なポイントは、本機構の奨学金の申し込みは、自分が在籍もしくは卒業した高校を通じて行うということだ。また、第一種、第二種の申し込み期限は、高校によって異なる。だから、来春からの貸与を希望する人は、すぐ
に高校の窓口で相談するようにしたい。また、現時点で高校卒業後、進学すると決めてはいるが、大学か短大か専門学校のいずれかに進むべきか迷っている人もいるだろう。そういった人で進学後、奨学金の貸与を受けたいと考ええているのであれば、とりあえず申し込みをしておくことをおすすめする。なぜなら進学先が決まってから、申し込みを しようと思っても、すでに申し込み期限が終わっている場合があるからだ。予約採用の申し込みに間にあわなかった場合であっても、進学先で申し込む在学採用も必ず、入学直後に行われているので、見逃さないようにしたい。

第二種は基準をクリアすれば希望者すべてに奨学金を貸与

 第一種や第二種の奨学金に申し込みをする際、定められた資格などはどうなっているのか。それを下の表にまとめた。大学、短大、さらには専門学校のいずれに進学する場合でも、定められた資格はほぼ同じ。いずれも学力の基準と家計支持者(父母、またはこれに代わって家計を支える者)の年収・所得の上限額(目安)が定められている。
 第一種は無利息なので、当然の事ながら人気が高い。しかし、その分、学力の基準も家計支持者の年収・所得の上限額は第二種より厳しく設定されている。なお、第一種と第二種の両方の貸与を受けることも可能だ。しかし、その場合、年収・所得の上限額がぐっと下がる。つまり、経済的に相当に困っている人にだけ両方の貸与を認めていると言える。
 では、どのような審査基準で奨学金の貸与が決まるのか気になるところだ。このあたりについて同機構では次のように説明する。「第一種は、基準をクリアした申込者の、学力・家計等について総合的に審査をして予約採用候補者として決定します。第二種では、基準を満たす希望者全員に対して貸与することを目的としています。これまでのところはこの目的を果たしています」 なお、進学後に申し込みをする「在学採用」については、大学、短大、専門学校別で家計支持者の年収・所得の上限額が細かく規定されている。これらについては、同機構のパンフレット「奨学金ガイド 2011」か、ホームページを参照するようにしたい。

月々の奨学金の額を決めるポイントとは

 実際、この春に大学や短大などに進学し第一種、第二種の奨学金の貸与を受けはじめた人の月額の貸与額や返還時の月額などを次ページの表にまとめた。これを見ると、第一種に比べ第二種のほうが月額の貸与額のバリエーションが豊富なことがわかるだろう。
 実際には、自分にどれだけの額が必要か、それを決めるのにいちばん頭を悩ますことだろう。そのあたりは両親などとしっかり話し合って決めるようにしたい。いずれにしても、貸与タイプの奨学金は、ある意味、借金を背負うことに他ならない。返還時のことも考えて借りすぎないことがいちばん大事なポイントだ。ちなみに大学生の第二種の貸与を受けている人では、いちばん利用者が多いのが月額5万円で、全体のほぼ4割を占めている。そして、8万円、10万円と続く。

本制度を利用するには保証人などが必要となる

 本奨学金の貸与を受け、学校を卒業した後、返還するのは貸与を受けた本人、つまり読者のみなさんとなる。つまり、奨学金の貸与が決まったら、みなさんと同機構が奨学金貸借の契約を結ぶことになる。その際、将来、万が一、返還が遅れたり一時的に返還ができなくなるというリスクを回避するため、同機構では、契約を結ぶ際、連帯保証人や保証人を立てることを求めている。連帯保証人は両親がなるのが一般的だ。保証人についてはこれまでは、両親の兄弟姉妹(おじさんやおばさん)にお願いする人が多かった。しかし、最近では、そういった親戚に頼みづらいという声も増えた。そこで、そういった人に代わって保証機関の保証が受けられる「機関保証制度」もあり、多くの人が利用している。
 この制度を利用した場合、奨学金の貸与を受けている間、毎月、一定額の保証料を支払う必要がある。実際には決めた毎月の貸与額から保証料が差し引かれることになる。その保証料(目安)をまとめたものが次のページの下の表だ。
もっとも利用者の多い第二種・月々5万円の奨学金の貸与を受けている人が本制度を利用した場合、保証料月額は2,246 円となる。結果、毎月、日本学生支援機構から振り込まれる額は、4万7,754 円となる。貸与を受けた奨学金の返還に関する計算については、同機構のホームページ内の「奨学金情報」ページ内の「奨学金貸与・返還シミュレーション」で簡単に計算できるので一度、試してみるとよいだろう。

借りたものはきちんと返す当たり前のことなのだが…

 ここ数年、新聞やテレビのニュースなどで、大学生の就職状況がとても厳しい状況にあるという報道を目にした人も多いだろう。しかし、学生時代に貸与を受けた奨学金は、卒業すると、就職していようがいまいが、一定期間の後、返 還がはじまる。なお、就職先が決まらず、留年した場合、貸与機関の延長は認められない。ただし、第二種は学校長が認める場合に限り延長できることになっている。
 最近では、卒業後、返還できるにもかかわらず返還しないという不心得者が増えつつあるという報道もあった。今後、そういった人を増やさないようにするため、日本学生支援機構では現在、新規に奨学金の貸与を受けようとする人 に対し、個人情報の取扱いに関する同意書の提出を義務づけている。
 これはどういうことかというと、将来、返還時に、事前の連絡無しに3か月以上、返還を怠った場合、その情報が各金融機関に伝えられるということだ。そうなると、各種クレジットカードの使用や新たにさまざまなローンを組むことができなくなる場合もあることを認めるとするものだ。
 日本学生支援機構が運営する奨学金の原資は、国から融資されたお金のほかに、本制度を利用して勉学に励んだ人たちの返還金も大きなウエイトを占めている。
 つまり、同機構の奨学金制度は、過去から現在さらには未来の世代へと受け継がれていくものなのだ。それを考えると、自分の都合を優先し、借りた奨学金を返還しないということは決して許されないことを肝に銘じておこう。

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