学長特別インタビュー

「私たちはなぜ大学へ行くのか?」

関西大学 学長 楠見 晴重
自分で考え
考えたことを実際にやってみる
「考動力」を実践できる
様々な学びの場を
できるだけ多く提供したい

関西大学 学長 楠見 晴重

楠見晴重(くすみ はるしげ)
 1953年大阪府生まれ。関西大学土木工学科卒業。同大学院工学研究科博士後期課程中途退学。関西大学工学部助手、専任講師、助教授を経て教授。2007年工学部長、2009年学長に就任。125年にわたって積み重ねてきた関西大学の資源の有効活用によるブランド力強化にOB学長として強力なリーダーシップを発揮。専門の地盤工学では、道路、鉄道の斜面防災に関する研究、京都の地下水の利用保全の研究など、行動する研究者として評価が高い。

国際ネットワークの要衝ハブ空港

 皆さんは、ハブ空港ということばを聞いたことがありますか?ハブとは「車輪の中心」、すべての車軸が集まる場所のことで、ハブ空港は、世界中のエアラインが乗り入れ、またそこを基点に近隣の空港へ乗り継ぎできる24時間稼動の空港のことです。
 ハブ空港は国内各地のネットワークの要であると同時に、24時間世界に開かれた国際ネットワークの要衝、拠点です。また、世界中からヒト、モノ、カネが集まる場所であり、その整備は国の浮沈に大きく関わるとみなされています。
 韓国が仁川(インチョン)国際空港を、シンガポールがチャンギ空港を国際ハブ空港としていち早く整備したことと、現在の両国の国際的地位の向上は決して無関係ではありません。
 わが国もこうした反省から、関西国際空港を作ったり、羽田空港に国際線ターミナルを作ったりしてハブ化に着手しましたが、成田国際空港との住み分けなどの問題もあってなかなか進展しません。

大学はグローバル社会の知の集積拠点

千里山キャンパス「あすかの庭」

千里山キャンパス「あすかの庭」

 日本の大学に求められているのも、まさにこのハブ化です。私たちの大学に限らず、日本の規模の大きい総合大学は、全国各地から多くの受験生を集め、卒業生を全国各地に送り出すことで、地方の政治経済文化を発展させるという役割を担ってきました。
 大学はまさに知の集積拠点だったわけですが、今後は、これに世界各国からの留学生・研究者が加わるのです。
 皆さんもご存知のように、グローバル化した日本企業の多くが、留学生などの外国人採用を活発化させています。採用した人材を幹部にする企業も出てきています。昨年会社の公用語を英語にするとしたことで話題になる企業が出ましたが、それが話題にもならない時代がすぐそこに迫っているのです。
 こうしたグローバル社会における大学は、教育・研究を中心に様々な機能を充実させ、学生や社会のあらゆるニーズに対応できる知の一大集積地である必要があります。多くの留学生を受け入れるとともに、海外に開かれた教育プログラムを用意することや、海外の大学、企業、国家機関と連携し、強力なネットワークを築くことも重要です。
 人や情報が大学を経由して行き交い、大学が知識や文化のセンターになる。それこそが大学のハブ化なのです。

スタディ・アブロードなど外国語学部の斬新な取り組み

 関西大学は2007年に政策創造学部を新設、同時に工学部をシステム理工学部、環境都市工学部、化学生命工学部の3学部に再編しました。また2009年には外国語学部を開設し、2010年には高槻ミューズキャンパスに社会安全学部を、堺キャンパスに人間健康学部を開設しました。こうしたキャンパスおよび学部学科の整備は、関西大学のハブ大学としての機能の強化を目指したものです。
 これらのうち外国語学部は、本学初の外国語系学部であるだけでなく、関関同立初の学部です。関西大学のグローバル教育の拠点として、英語、中国語を核に国際関係を学ぶ学部です。特色は、2年次に1年間海外留学する「スタディ・アブロード」を必修で行うことです。
 スタディ・アブロードの前後でTOEFLの受験が必須となっており、留学先によっては留学前に点数の基準をクリアする必要があります。留学先大学は現在、米国2大学に、イギリス、フィリピン、中国それぞれ1大学ですが、本年からはニュージーランドとイギリスの各1大学がこれに加わり、全部で7大学となります。
 外国語学部は、今年3年目を迎えますが、単に語学の実践的運用能力を高めるだけでなく、しっかりとした学問に基づいた異文化コミュニケーション力を持つ人材となるために、教育内容をさらに充実させたいと考えています。

こころ、からだ、くらしを総合的にとらえる人間健康学部

 人間健康学部は、「こころ」「からだ」「くらし」を総合的にとらえ、健やかでおおらかに生きることを実現するための教育と研究を行う学部です。スポーツを通して健康を学ぶ「スポーツと健康コース」と、福祉社会を支える力を身につける「福祉と健康コース」を設置しています。
 両コースを横断する「連携科目」や、近年健康との重要な関わりが明らかになりつつあるユーモアや笑い、身体文化に関する科目を設定し、人間と健康に関する総合的な専門性を身につけることに力を入れています。
 卒業後は、スポーツに関わる指導者、学校教員、健康・スポーツ関連の一般企業などの分野での活躍が期待されています。

リスクマネジメントのプロを養成する社会安全学部

 社会安全学部は、日本の大学で初めて設置された学部で、防災や危機管理に関する最先端の知識を学ぶ学部です。設置した目的は、危機管理(リスクマネジメント)の専門家不足に対応するためです。
 現代社会はリスク社会ともいわれるように、企業の生産現場、病院、道路交通、学校などあらゆる場所にリスクが潜んでいます。いったん事故が起きた場合、その後の対応の良し悪しは、組織の浮沈に関わります。ここ数年、その対応を誤ったばかりに、大きな打撃を受けた組織は数知れません。
 社会安全学部では、こうした様々な災害における危機管理、災害とその復興、被災した人の救援と支援、医療事故、交通事故、企業倫理などについて総合的に学べるため、自治体、企業から大変注目されています。

自ら課題を求め解決する多彩な学びを用意

多様な国際交流でグローバルな人材作り

 外国語学部・人間健康学部・社会安全学部の最新の動きについてご紹介しましたが、いま関西大学が全学あげて取り組んでいることについても紹介します。
 皆さんが大学に入ったとき、おそらく一番とまどうのは、大学と高校の勉強との大きな違いです。一つの学問体系を、教科書を通して理解していけば必ず解に到達できる高校までの勉強と違い、大学の学問は、様々な現象や事件、書物などに接する中で、自ら問題を見つけ出し、解答を見つけ出そうとするものです。解に至るルールはありませんし、場合によってはいくつも解が出たりします。
 こうした大学での学びに早く慣れてもらうために、関西大学では「全学共通科目」を1年次に設置しています。このうち「スタディスキル科目」では、自分たちが選んだ課題を調べレポートにして発表、他の参加者とディベートを行ってその結果をもとにレポートにまとめています。
 こうした授業を入学早々に行うのは、教科書を読んで覚えるといった勉強から、自らの頭で考え、行動するという大学の学びに早く頭を切り替えてほしいからです。自分の頭で考えたことを実際にやってみることを、私たちは「考動力」と呼んでいますが、関西大学には「考動力」を鍛える機会が数多くあります。
 高齢化が進む兵庫県丹波市では、大学のスタジオを設け、そこを拠点に、空き家をリノベーション(大規模改修)し、地域住民との交流を進めるなど、活発な取り組みを行っています。また日本一長いといわれている大阪市の天神橋商店街には大学の研究センターを設け、商店街の人々といっしょに活性化を図っています。
 こうした活動をすることで、学生は自分の力で学ぶ大切さを知ります。私たちはよく社会に出てから「学生のときにもっと勉強しておけばよかった」などといいますが、これを学生のときに自覚できるのが、このプログラムのいいところです。多くの皆さんが、私たちのネットワークに飛び込んできてくださることを期待しています。

インタビュー・文:古矢明雄(螢雪時代)
写真:直江泰治

この記事は「螢雪時代(2011年4月号)」より転載いたしました。

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